ほころび

動作が止まっているのであれっ?と気がつく。かばんの口を開けて覗き込んでいる。何をするんだっけと思って、何かをするつもりだったことが分かった。この様子は何かを取り出そうとしたに違いない。とっさに何を出せばいいのか分からずに顔を上げると改札口である。改札口、改札口。改札口なら定期券ではないか?改札を通りながらおかしくなる。駅まで歩いて、かばんを覗くところまでの動作は意識に上がりもせずスムーズだったのだが、かばんを覗いたところで混乱したらしい。必要に応じてかばんから取り出すものは、家の鍵、携帯電話、定期券等複数ある。かばんを覗く動作が、定期券を取り出すではなくて、取り出すを召還したため選択が生じ、途方に暮れていたらしいのだ。後から思い起こすと、あのちょっと違う感じだったものはどうも家の鍵だ。

少しわかってきた。

目下の関心事は、この世界像と言葉の関係である。その関係を問おうとすると陥る堂々巡りを脱する試みが、アカントステガに言葉を教える動機になったらしい。

どうも、アカントステガがこの世界像を得たとすれば、言葉は教えるまでも無いようだ。また、世界像と言葉の発生の過程について、もっともらしい仮説に辿り着いたとしても、「もっともらしい」ことが堂々巡りそのものなのだから、そこを行っても仕方が無い。

探しているのは、はまらないピース、この世界には答えが無い問い。
アカントステガから話しかけられるようなことがあれば、たぶんこの試みは失敗ということだな。

AI

『モノクロ珈琲』のsheafさんと、みずすましさんの、AIについてのやりとりが面白いのだ。
でも、ふと思う。機械が独自に面白さを見出しているとしても、人間には分からないではないか。ひるがえって、プログラムが実行される中で、人間は独自に自由意思を見出しているということはないだろうか。
ときどき、事務所のFAXに同じエラー表示が出るのだが、作業をすれば消えるので、誤表示だと思っている。先生が今日初めてそのエラーに気付いて、サービスを呼べと騒ぐので、たまに出ますよ、作業に差し支え無いですよ、(サービス呼んでも原因見つかりませんよ)といさめるが、聞かない。エラー表示のために、受信したFAXの印刷が妨げられていた、とおかんむりなので、受信してるなら問題ないじゃないですかと言い返すのはやめて、サービスにご足労願った。
そんなことではなくって、誤表示、動作ミス、等々が、例えばそれがFAXお気に入りの冗談だったりしてもわかんないよね、ということなのだけれど、愚痴が先になった。

見えないもの、分からないもののことを考えていると、話を噛み合わすことができなくて、けんか別れのようになった友人を思い出し、以前の主張何処へやらになっているのに気付く。これは世界像なんだなあとしみじみ思う。リアリティーを信用すると間違う。

「内部」は私の用語で、アカントステガには、まだ世界像も自分像も無いのだから、外部や内部は無い。世界像が立ち上がることがあったとしても、それはこの世界とはまったく違うかもしれない。外部や内部は現れないかもしれない。
言葉も、違うかたちで現れるのかもしれない。
オーダーメイドなのだから、決めればいいのだけれど、どっちがいいんだろう。

レワニワに感化されて、アカントステガに言葉を教えてみようと思ったが、まったく進まない。
アカントステガに、自身の内部の動きに関心を持たせるには、起きて起きてと揺さぶってればいいんだろうか。
きざしきざし

プロフィール

シゲ

  • Author:シゲ
  • 39才。女。司法書士事務所で、クレサラのお仕事に従事。写真はうちのアカントステガ。


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